誰が,こんなに嘘にまみれた社会を作ったのか,許したのか。どうせ嘘のある社会なら,過ごしやすい社会の方がいい。
デジタルメディアの登場で,加工技術が変わり,合成写真などの新しい偽のリアリティが出現している。フォトショップの登場で,ハサミと糊も必要なくなった。それら現実的な画像は,メディアが信頼できないことも意味する。そうして,それによって作られた芸術品も現実的過ぎてアートではなくなっている。
油絵というのはリアリスティックではない。当然描き手もリアルさなど狙ってはいない。詩も現実の言葉とは遠く離れたものだ。普通の会話が詩的語感を含むことはあるかもしれないが,おおむねそれほど一致はしない。だが,合成写真にはリアリスティックが求められる。リアルさの追及が,絶対使命だ。
高品質な油絵にリアルではないと批判することなど馬鹿げているように,素晴らしい出来栄えの合成写真にどうせ嘘っぱちだと非難するのも意味のないことだ。それらの素晴らしさをきちんと見極めれば,政治家も,テレビ局も,…音楽業界も,嘘の付き放題な世の中にうんざりする。嘘で塗り固めなければ成立しないリアルよりも,素晴らしき嘘のリアリティがあるワイヤードの方が,過ごしやすい。
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